2023年12月31日日曜日

安楽椅子探偵ヴェルナーの3


 クラスメイトからの相談父方の祖父が死んで、遺産相続の場に来ていたいとこの様子が変だった。なにが変なのか自分でもよくわからないが、何かが変なのだ。


「会ったのは久々なのか?」
「うん、事情あって彼女は王都で暮らしてるけど会ったのは数年ぶり」
「むしろ、それでよく当人だとわかったな?」
「あー実は彼女には小さい頃についた顔に大きな傷があってね」
ポーションが間に合わなかったらしい。王都にいたのは冒険者などで顔に傷のある女性がいることなど、地元じゃ目立つせいだった。なので彼女にとっても祖父になる人物が亡くなるまで地元には帰ってなかったらしい。
「じゃ、その彼女には傷があったのか」
「うん、間違いなく」
断言するクラスメイトにヴェルナーは少し考え込んだ後、ドレクスラーにその相続の話がある数日前ぐらいに王都で顔に傷のある女性、または顔をひどく損壊させた女性の遺体がなかったか調べてもらう。
で、あったことが判明。
「それなら話が簡単だ」
ヴェルナーに説明を受けたクラスメイトがあわてて女性の行き先を調べたが既に姿を消していた。

「間に合わなかったか」
「それでも取られたのは現金だけだ」
彼以外にも不審に思っていた人物はいたようで、ひとまず現金の一部だけが渡されたようだ。それでも平民にとっては数年遊んで暮らせる金額だが、先祖由来の品などは無事だったとのこと。
「なによりもやもやが消えてスッキリしたし、本物のいとこもちゃんと弔ってやれる」
クラスメイトはそう言ってヴェルナーに礼を言った。

※人の印象は意外と曖昧で、目立つ印(傷やほくろ、または眼帯など)と髪型、性別、年代など「記号」が一緒なら結構騙される。
犯人はたまたまよく似た顔立ちだったが把握してないレベルの親戚でたまたま顔が似てたタイプ

女性はわざわざ顔に傷をつけたのか?と言うと、さらに後ろに別の人物がいたかもしれないし、傷に見えるような特殊メイク?だったかもしれない。
引き際の見事さからも初犯でもなさそうだな。とはヴェルナーの談。

ドーナツ