手元になぜか大量の大根がある。
いや、謎も何も先ほどのクエストの報酬だったんですがね。パーティで受けたもので、六人分が私の手に。【ストレージ】に入れておけば劣化することはないのだが、せっかく旬の大根を貰ったわけだし、しばらく大根料理にいそしもうとしますか。
「大根って言ってもあんまり料理としては知らないな?」
「ブリ大根でし」
「おでんに入ってるイメージしかない」
「大根おろし? あとサラダ」
「煮物って感じだよなぁ」
クランメンツの大根のイメージが貧困な件。いや、私もどちらかと言えば大根て和食のイメージがあるのだが。いや、いや海外って大根食べるのか?
「大丈夫、日本人の魔改造精神を信じてください」
「それもどうなんでし!」
とりあえずいったんログアウト休憩をしてざっと大根料理のレシピを調べ――思った以上に魔改造精神が旺盛でした。はい。
「食事はともかく、これからどうする?」
「迷宮行く?」
「でしねぇ」
「アナト出てこないしな」
「それ、本当に鳥ルートであってる?」
「そもそもルートが違う可能性」
それぞれに言われながらもシンは「あってるはずなんだけどなぁ」とちょっと自信がなさそうなのが何とも。
「アナトって確かどっかの女神だったか?」
「そうそう、処女神だけど、割と血なまぐさい逸話が多いみたいだね。
弓に関する逸話もあるから、こっちのルートの可能性がないわけではないと思う」
さすがお茶漬先生、博識だな。しかし、奇しくもこのルートの最前線を走っている我々だが、誰一人として弓メインのスキルを持っていないという。若干の申し訳なさがあります。ペテロが持っているだけマシか。
「ペテロ、今から弓スキルを育てる気は」
「どうしようか」
ペテロも遠い目をしながらぼやいた。ですよねー。
「あぁ、でも派生スキルは応用できそうだし、考えてみようかな」
そう言ってペテロは肩をすくめた。多少は役立ててほしい。
〇〇〇
そんなわけで迷宮40層付近でレベル上げ、スキル上げをしております。さすがにすぐに45層を目指すには無謀だしな。
帝国から新大陸へ向かう準備の進捗具合やら、二垢は船代の工面とかの話をしながらもう一度ボスを倒す。『魔力の指輪』は自分にも有用なので数が欲しいです。
レアドロップの飾り羽や矢羽は矢の材料になるらしいです。必中の|鏃《やじり》』はカミラ行きだな。
迷宮からクランハウスに戻り、食事をとる。
「とりあえず今日は大根と手羽元のポトフだ。つけあわせはダイコンの皮のきんぴらですよ」
「肉!」
ダイコンとタマネギ、ブロッコリーと手羽元を鶏がらスープで煮込んだものだ。きんぴらの方もオリーブオイルで炒め、ベーコンを入れたりと洋風よりの味付けにした。それとまるパン。
「はー、あったまるぅ」
「優しい味でし」
お茶漬と菊姫には好評な模様。他の面々も悪くはなさそうだな。ペテロはきんぴらが気に入ったようだ。