9 学園盗難事件
「マゼル・ハルティング。来なさい!」
突然学園職員に呼び出されたマゼル。なんだなんだとついていくヴェルナーとドレクスラー。
なんとマゼルに窃盗の容疑がかかっているというのだ。
どういうことかと聞けば、密室になっている部屋から絵画が盗まれている。ドアにカギはかかっていたが、窓は開いていた。
マゼルの身体能力ならば二階から絵画を盗むことも可能だったはず。それにその時間、赤い髪を見たと証言している者がいるという。
寝耳に水のマゼル。そこに、発見者だという生徒がやってきて、マゼルが盗んだに違いないという。
聞きもしない絵画の価値とかをべらべらしゃべってくるので「こいつ怪しいな」となるヴェルナー。第一発見者が実は犯人。よくある話です。しかもこいつ日ごろからマゼルを目の敵にしている魔術科の生徒じゃねーか。となる。(騎士科なのに魔法を使えるマゼルにライバル心を持ってるらしい)
ドレクスラーに「ちょっとマゼルの部屋の前で怪しい奴が来ないか見ててくれ」とこっそりと頼む。
その時間はマゼルとドレクスラーと一緒にいました。ツェアフェルト伯爵家の名前で保証します。とにっこり微笑むヴェルナー。おう、マゼルに冤罪かますというならうちが相手してやんよ。と言う親友強火担。
教師も伯爵家の名前を出されたら弱腰になり「他にも赤い髪がいるかもしれないな」となる。
ひとまずマゼルは解放される。
だがヴェルナーは憎々し気にマゼルを見ている生徒の視線に気が付いていた。
「おう、大丈夫だったか」
「あぁ、そっちは」
「一応なんもなかったな」
「そうか。マゼル一応でいいんだが、中に誰かはいったような気配はあるか?」
「……ん、大丈夫だと思う」
「わかった。しばらく誰かはいった可能性があったらすぐに報告してくれ」
「? わかったよ」
「まぁそんな時間はかからないと思うぜ」
その晩、件の部屋に入り込む影。ごそごそしている。
「クソ! なんだってツェアフェルトが出てくるんだ!」
「そりゃ、友人だからな」
そう言って部屋の仲が明るくなる。慌てて振り返ると、そこには三人と教師の姿。ただし、昼間の職員とは別の人物。
「犯人は現場に帰る。ってな」
「な、何の話だ?!」
言葉には答えず、ヴェルナーはその生徒が掴んでいる額縁を持ち上げる。
「なるほどなぁ」
「な、なにが」
「いや何、盗まれたとかいう絵画と同じサイズだなって思ってさ」
そう言ってヴェルナーは額縁から絵画を外すと、その後ろから盗まれたはずの絵画が現れた。
「なるほどな。よくわかったな。ヴェルナー」
「まぁあれだ。初歩的なトリックだな」
これにて件の生徒は御用。昼間の職員も彼の家の息がかかっており、部屋の鍵を渡したのは彼であったことが判明する。
ヴェルナーがドレクスラーをマゼルの部屋に向かわせたのは、偽物の絵とか盗み出した絵をマゼルの部屋に隠しに行くのを警戒したため。
おそらく昼間にマゼルを陥れられなかった生徒がそれをする可能性があったので、夜に張っていた。と言うわけだ。
ちなみにマゼルを陥れようとした理由は、好きになった女子生徒が「ハルティング君いいわよね~」と言っているのを聞いてしまったからだとか。
「バカじゃねーの」
「まぁまぁ」
「あははははは」
吐き捨てるヴェルナーと乾いた笑いを上げるしかないマゼル。そんな二人を慰めるドレクスラーだった。