王宮メイドからの相談。やたらとため息をついている女性に何があったのか?と尋ねてから
申し訳ありませんと言いながらも彼女が言い出したのは、彼女の「友人」の話だった。
彼女の友人は男爵家なのだそうだが、その当主が次期当主を決めるのに、別荘に隠したというあるものを探し出すのを条件に入れたのだという。
別に当主争いがあるとかではなく、彼の一人息子が順当に継承予定だったというから、その当主のちょっとお茶目か何かだったのだろう。「友人」曰く、そういうはた迷惑な思い付きをする人だったらしい。
しかしながら、いざ見つけようという話になる前に例のフィノイの緊急出撃令があった。
その男爵家もそれに従って出撃し、あろうことか当主が戦死してしまったらしい。
爵位はその順当に一人息子が継承したのだが、死亡する前に前当主が言い出した「探し物」がここで問題になった。それを見つけていないのに当主を継承するなどとは、と言い出す親戚が出てきたのだ。
しかもその親戚は自分こそが見つけて当主にふさわしいなどと言い出す始末で、放置しておくわけにはいかなくなったという。
そもそも、その隠してあったものが当主に必要なものだったとかで、どちらにしろ探さなくてはいけない。
しかしどれだけ屋敷を家探ししても見つからず、「友人」はすっかり参ってしまったのだとか。
ヴェルナーはそれを聞いて「はた迷惑な爺さんだな」と思いながらも「大変だな」と返した。
メイドは少しだけ残念そうな顔をして――あわよくば「知恵者」と言われるヴェルナーの意見を聞きたかったのかもしれない――「はい」と返したという。
ヴェルナーはそのあとすぐに典礼大臣である父に彼女の「友人」の家の前当主の相続周りの確認や、かの人物の武勇を確認したのち、後日件のメイドに声をかけて、いくつかのアドバイスをした。
一つ、おそらく前当主の視線より高い場所が隠し場所だろう。
二つ、家具や調度品の場所ではなく、おそらくはレンガ、もしくは石壁のどこかだろう。
三つ、浮いたレンガや石壁があったら抜いてみてほしい。
数日後、かのメイドから「友人」から無事に探していたものが見つかったとの連絡を受けたと嬉しそうに報告があったとともに、「友人」の家から名産の紅茶の茶葉が贈られた。
ある宮廷茶番の一幕である。
※件の老人は握力関係でなんか有名な武勇があった。最近腰の調子がちょっと良くなかった。などから。
腰をかがめなきゃいけない下よりは上だろう。と言う推測。