アンハイムに赴任が決まった後の準備中の頃の話
王宮の書庫室でアンハイム地方の物流とかの資料を探しているヴェルナー。
トライオットの方の情報とかも探そうとそちら系の本を読んでいるときに、変なメモを見つける。
自分の前に借りた人がシオリ代わりに挟んでいったのかな? と思いつつそのまま戻しておく。
その数日後、王宮代わりに暴漢に襲われる。
護衛役のノイラートにとらえられ、そのまま憲兵に引き渡された。いったい何なんだ? と思うヴェルナー。どう見ても護衛付きの貴族に特攻かけ強盗には見えなかったし、いくら俺が武官家の騎士に比べて貧弱でもあからさまな護衛がいたよな? と思っていた翌日。
セイファート将爵がやってきて「やれ、ちょいと面倒なことになった」と言う。
「面倒、ですか?」
「卿に落ち度はない。むしろタイミングがよかったというべきなんだが」
将爵が言うには、ヴェルナーを襲った男はどうもスパイ容疑がかけられていた男らしい。
どこの国の、までは教えてもらえなかったものの、ここ半年ほどずっと尻尾を出すのを狙っていたらしい。
で、俺を襲って捕まったわけだが、翌日牢の中で自害していたのが見つかったらしい。奥歯に仕込んでいた毒だとか。どこのスパイだ。いやスパイだった。
らしい。らしい。ばかりだが、国の暗部にこれ以上足を突っ込みたくないので詳しくは聞かなかった。
でまぁ、半年追いかけた相手があっさり手の届かないところに行き、手引き、あるいは取引していた相手も見つからず。ついでに何でそいつが俺を狙ったのかもわからず。
「というわけで、何か心当たりがないかと言う話になったんじゃが」
「ないですね」
だよな。と言う反応をする将爵。ヴェルナーにしてみればアンハイムに行くのは左遷の一種なわけだから、ヴェルナーを目の敵にしている連中の仕業と言うわけはなさそうだ。
そんなわけで、将爵には何かわかったら教えてほしいと言われながらも、アンハイム行きの準備に集中するヴェルナー。
借りた本を返そうとして「あ」と思いつく。そう言えば、襲われる前に読んでいた本にシオリが挟んであったことを思い出す。
I 184-1-9 II 271-14-30 III 145-7-2 IIII 148-17-11 II 225-10-5 259-7-2
改めて確認し、数行に渡って書かれているその数字に、首をかしげるヴェルナー。
同じくメモをみたシュンツェルも首をかしげる。
「これ、Iが並んでいるのは何か意味があるんですかね」
「あ、こいつは」
そういやこの世界、ローマ数字はなかったな。と思い当たる。
当たり前のように1、2と読んでいた。
同時に、おそらく後に続く数字とは別の意味があるんだろうということに思い当たる。
ひとまず書庫室に本を戻し、メモについて書庫室の管理人に尋ねるが心当たりがないという。
この本を自分の前に借りた人物も聞くが、初めて借りたのが自分と言うありさま。もしかして書庫室を利用するに人間が少ない? と言う可能性にげんなりしつつ、自分を襲いに来た人物もその少ない人物の一人だった。が、彼はどっかの部門の文官の一人で、利用することに関して違和感がない。ますますなんでヴェルナーを襲ったんだ?と言う疑問がある。文官家の出身とはいえ、フィノイで軍功を立てて第二位の功績に名前あがってるんだけどな?と思うヴェルナー
しかしそれならと、管理人に4巻以上のシリーズがある本はいくつある? と聞けばそこそこの数。
じゃ、その中で栞を挟んでいた本、トライオット関係の本はいくつある? と言えば数種類まで数が絞れた。
手分けしてその本を集めてきて、確認するヴェルナー。一つ目がページ数、二つ目が行数、三つ目がいくつ目の単語か、と言う暗号だった。
三つ目のシリーズで意味のある文になり、それをもって将爵のもとへ。
とりあえずスパイの情報交換方法がわかった。あとは専門部門に任せることになりました。
あとでわかったが、ヴェルナーが暗号の元データとなるシオリの挟んである本を借りてしまったことで、脚が付いたと思った相手が早とちりしての襲撃だった。
ヴェルナーを襲った文官は既に尻尾を掴まれかけていることがわかっていたので、トカゲのしっぽ切りみたいなと事があった模様。でも優秀な王国上層部がそれを見逃すはずもなく、取引先の人物も御用したよ! とのこと。それが、のちのちのコルトレツィス侯爵家討伐戦の情報戦に役に立つのだが、それはまた別の話。