【ネタ】酒が飲めない町

 

今日は禁酒の日だそうで
マゼル一行がとある子爵領の領都に立ち寄った時の話



領都といっても子爵領なので村よりちょっと立派かな?みたいなサイズ感。
宿をとって夕飯でも食べようと一階にある宿の食堂に行く。ルゲンツがいつも通り酒を注文すると店主が申し訳なさそうに「今日は酒が出せない」という(生水の衛生面を考慮し、度数の低いシードル系は酒に分類しないものとします)
なんじゃそりゃと周囲を見てみると確かに他の客も酒を飲んでおらずそもそも客自体が少ない。
タイミングか悪かったな!と、客の一人が言う。常連でここによく来る旅商人だそうだ。

どういうこっちゃと聞くと、何代か前の領主が酒で大失敗をして赤っ恥をかいたらしい。
そんで、それは酒のせいだと自身の領で酒の禁止をしようとした(のちにマゼルから話を聞いたヴェさんがアメリカ禁酒法みたいだなって思った感じのやつ)
ただ、当時の側近が自身の首をかけて領主を諌めたため実際は施行されることはなかったが、一年に一度ぐらいは酒を絶って身体と精神をいたわるのも悪くないだろうと、禁酒日が設けられた。
別に憲兵が見回りに来るわけではない緩い法だが、飲兵衛ほど酒での失敗に心当たりがあるため、なんとなく今日まで続いているとのこと。

マゼル曰く、町の雰囲気も良かったし、人々も「うちの領主さま」みたいな感じで慕っているみたいなので、今代もそうだが、当時の領主も好かれてたんだろう。
なお、当時の側近は自分の首をかけたとはいえ、今まで溜まっていたうっぷんを晴らすがごとく物理的にも精神的にもぼっこぼこにしたらしいので、おそらく「いつかやると思ってた」的な領主だったんだろうな。と、ヴェルナーは苦笑いする。
一応気になって調べてみたら、確かに本人は赤っ恥だが、それ以外には「あーあーあー、うん」みたいな苦笑いできる感じの奴だった。なお、本人はその失敗を反省してその後一滴も酒を飲まなかった。なんてこともなく。普通にちょいちょいやらかしては開き直った側近にぶちぎれられていたらしい。

因みにそれを調べていたのがなぜか将爵に知られ、どうやら当時の領主を知っていたらしく、その同世代や若い連中はそれを知って震撼してちょっと酒を控えたらしい。(将爵は若いってか幼い頃)
本人としてはむしろ失敗自体よりも領地以外に伝わってることの方がきつかったんじゃなかろうかと思ったが、要するに世代的な教訓話になっていたようだ。
ヴェルナー(俺も前世のこととかあるし、酒の失敗は気をつけよう)と思うなりしたとかなんとか。